薬剤師の転職市場で「求人数」は今どうなっているのか。結論として、2025年3月時点の有効求人倍率はパート除きで3.24倍と依然として売り手市場が続いていますが、将来的には供給過剰が予測されており、転職を考えるなら「今の数字」を正しく読み解くことが重要です。
【結論】薬剤師の求人数は依然として多いが、知っておくべき注意点がある
2026年2月現在、薬剤師の転職市場はまだ売り手市場と言えます。厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師の有効求人倍率は2025年3月時点で2.30倍(パート含む)、3.24倍(パート除く)と、全職種平均(約1.2倍)を大きく上回っています。求職者1人に対して2〜3件以上の求人がある計算で、薬剤師として転職先を見つけること自体は難しくない状況が続いています。
しかし、ここで安心してしまうのは危険です。有効求人倍率は「医師・歯科医師・獣医師・薬剤師」をまとめた数値であり、薬剤師単独のデータではありません。さらに、転職サイトに掲載されている求人数と、厚生労働省が発表するハローワーク経由の求人数は集計方法が異なるため、単純な比較はできません。本記事では、公的データと転職サイトの求人数の両面から、薬剤師の転職における「求人数」の実態を徹底的に解説していきます。
薬剤師の転職市場データまとめ
| 項目 | データ |
|---|---|
| 有効求人倍率(パート含む/2025年3月) | 2.30倍 |
| 有効求人倍率(パート除く/2025年3月) | 3.24倍 |
| 全職種平均の有効求人倍率(2025年) | 約1.22倍 |
| 薬剤師の平均年収(令和6年賃金構造基本統計調査) | 約599.3万円 |
| 薬剤師偏在指標が1.0を超える都道府県 | 東京・神奈川・兵庫・福岡・広島・大阪・宮城の7都府県 |
| 主要転職サイトの公開求人数(2026年2月時点) | 薬キャリ約71,000件、マイナビ薬剤師約56,000件、ファルマスタッフ約50,000件 |
| 将来予測(厚生労働省需給推計) | 2030年以降、供給が需要を上回る見通し |
| データ出典 | 厚生労働省「一般職業紹介状況」「薬剤師の需給推計」「賃金構造基本統計調査」 |
有効求人倍率で見る薬剤師の求人数の推移
薬剤師の転職市場を客観的に把握するうえで最も信頼性の高い指標が、厚生労働省が毎月公表する「有効求人倍率」です。有効求人倍率とは、ハローワークに届けられた有効求人数を有効求職者数で割った値で、1.0倍を超えれば「求人の方が多い(売り手市場)」、下回れば「求職者の方が多い(買い手市場)」を意味します。
薬剤師は厚生労働省の職業分類上、「医師・歯科医師・獣医師・薬剤師」として一括集計されています。この点は留意が必要ですが、薬剤師の転職市場を俯瞰するうえで有力な指標であることに変わりありません。以下は、過去5年間の3月時点における有効求人倍率の推移です。
| 年度(3月時点) | パート含む | パート除く |
|---|---|---|
| 2021年3月 | 2.04倍 | 2.82倍 |
| 2022年3月 | 2.03倍 | 2.86倍 |
| 2023年3月 | 2.17倍 | 3.05倍 |
| 2024年3月 | 2.41倍 | 3.38倍 |
| 2025年3月 | 2.30倍 | 3.24倍 |
出典:厚生労働省「職業安定業務統計」
この表からわかるのは、有効求人倍率は2021年以降おおむね上昇傾向にあったものの、2025年3月にはわずかに低下したという点です。とはいえ、パート除きで3.24倍という数値は全職種平均(約1.2倍)と比較して依然として非常に高い水準であり、薬剤師が転職先を見つけやすい状況であることは間違いありません。
注目すべきは「パート含む」と「パート除く」の差です。パートを除いた正社員・常勤ベースの求人倍率の方が常に高くなっており、正社員として働ける薬剤師が特に強く求められていることがわかります。つまり、正社員としての転職を考えている薬剤師にとっては、より有利な市場環境にあると言えるでしょう。
月別で見る求人数の季節変動と転職のベストタイミング
薬剤師の求人数は年間を通じて一定ではなく、明確な季節変動があります。厚生労働省のデータを月別に分析すると、例年10月以降から翌年3月にかけて求人数・有効求人倍率ともに上昇し、春から夏にかけて一時的に減少する傾向が見られます。この季節パターンを理解することは、転職のタイミングを最適化するうえで非常に重要です。
具体的には、12月から3月にかけてが有効求人倍率のピーク期間となります。これは年度末の退職者補充や新年度に向けた採用活動が本格化する時期と重なっています。一方、5月から6月は求人倍率が最も低くなる傾向があり、7月以降に再び上昇を始めます。したがって、転職活動は11月頃から始めて、12月から3月の求人数が最も多い時期に選考を進めるのがベストタイミングと言えます。
ただし、2025年は例年とやや異なる動きも見られました。5月以降の求人減少が例年より顕著で、回復のペースも鈍化したことが報告されています。調剤薬局の倒産件数が2025年に過去最多の38件(前年比35.7%増)を記録するなど、業界再編の動きが求人数にも影響を与えている可能性があります。転職を検討する際には、最新の月別データを確認しながらタイミングを見極めることが大切です。
主要転職サイトの求人数を比較する際の注意点
薬剤師向けの転職サイトを利用する際、多くの方がまず目にするのが各サイトの「公開求人数」です。2026年2月時点で主要な転職サイトの公開求人数を確認すると、薬キャリエージェントが約71,000件、ヤクマッチ薬剤師が約58,000件、マイナビ薬剤師が約56,000件、ヤクジョブが約50,000件、ファルマスタッフが約50,000件と、各社が数万件規模の求人を掲載しています。
しかし、この「公開求人数」をそのまま鵜呑みにするのは注意が必要です。転職サイトの求人数にはいくつかの「カラクリ」が存在するからです。まず、同じ求人が複数のサイトに重複して掲載されていることは珍しくありません。また、1つの企業が複数の雇用形態(正社員・パート・派遣)や複数の勤務地で募集をかけている場合、それぞれが別の求人として計上されることもあります。さらに、すでに充足済みだがサイト上で非公開になっていない「ゾンビ求人」の存在も指摘されています。
加えて、転職サイトの求人数とハローワーク経由の有効求人数はまったく別物です。ハローワークの数字はあくまで公共職業安定所に届けられた求人のみを集計しており、民間の転職サイトに掲載されている求人はカウントされていません。そのため、「求人数」という同じ言葉でも、どのデータソースに基づいているかによって数字の意味は大きく異なります。
転職サイトの求人数は「選択肢の幅広さ」を測る一つの目安にはなりますが、それだけで転職先の質や自分との相性を判断できるものではありません。求人数の多さに加えて、非公開求人の質、コンサルタントによる個別紹介、職場の内部情報の提供体制なども含めて総合的にサイトを選ぶことが重要です。各転職サイトの特徴や選び方について詳しく知りたい方は、薬剤師転職サイト比較おすすめ10社【2026年最新】求人数・口コミで徹底解説もあわせてご覧ください。
都道府県別の薬剤師偏在と求人数の地域差
薬剤師の求人数は地域によって大きく異なります。この地域差を理解するうえで参考になるのが、厚生労働省が2023年に公表した「薬剤師偏在指標」です。この指標は、各都道府県における薬剤師の労働力と業務量のバランスを数値化したもので、1.0を上回ると薬剤師が充足している地域、下回ると不足している地域と判断できます。
偏在指標が1.0を超えているのは東京都(1.28)、神奈川県(1.12)、兵庫県(1.10)、福岡県(1.10)、広島県(1.07)、大阪府(1.06)、宮城県(1.04)のわずか7都府県のみで、残りの40県はすべて1.0以下、つまり薬剤師が不足している状態です。特に福井県(0.74)、青森県(0.78)、富山県(0.80)、山形県(0.81)など日本海側や東北地方の不足が深刻です。
この偏在状況は転職市場に直接影響しています。薬剤師不足の地方では高待遇の求人が出やすく、年収700万円以上の好条件求人も珍しくありません。SNS上でも「田舎や過疎地域では破格の求人が出る」という声が多く見られます。一方、東京や大阪などの大都市圏は薬剤師が充足しているため、競争が激しく、年収や条件面で妥協が求められるケースもあります。
地方への転職を検討している方は、エリアごとの求人事情をしっかり調べることが成功のカギとなります。たとえば、北海道の薬剤師転職ガイドや沖縄の薬剤師転職ガイドでは、各地域の年収相場や求人動向を詳しく解説しています。また、大阪の薬剤師転職ガイドや福岡の薬剤師転職ガイドもあわせて参考にしてみてください。
薬剤師の求人数に関する口コミ・リアルな声
実際に転職活動を経験した薬剤師や、業界に詳しい専門家のリアルな声を集めました。求人数の多さを実感する声がある一方で、数字の裏にある落とし穴を指摘する声もあり、転職活動を始める前にぜひ参考にしてください。
ポジティブな声
転職経験者の中には、求人数の豊富さを肌で感じたという声が多く聞かれます。「転職サイトに登録したら想像以上に多くの求人を紹介してもらえた」「地方であっても高待遇の求人が複数見つかった」といった体験談は数多く報告されています。実際に「2度目の転職で年収250万円UP」を達成した薬剤師もおり、複数の求人を比較検討できる環境を活かして条件アップに成功するケースは珍しくありません。
また、有効求人倍率が2倍以上で推移していることから、「まだまだ売り手市場」「転職先の選択肢は十分にある」という前向きな見方が大勢を占めています。
注意喚起・ネガティブな声
一方で、「ネットや広告に『求人が多い今が転職のチャンス!』といったメッセージが出ていますが、時期によって転職が有利になることはほとんどありません」というキャリアコンサルタントの指摘もあります。煽り文句に踊らされず、自分のキャリアプランに合った判断をすることが大切です。
さらに、「構造が悪い職場は頑張りで解決できない。薬剤師の転職でいちばん多い落とし穴は『私さえ頑張れば何とかなる』って思い込むこと」という声も印象的です。求人数が多いからこそ、数ではなく質に目を向けて転職先を選ぶ必要があるということでしょう。
また、「医療介護系の人材領域はキャリア選択に必要な情報が圧倒的にクローズド」という課題も指摘されており、求人票だけではわからない職場の内部情報を得ることが転職成功の鍵となります。
こんな薬剤師にこの記事はおすすめ
薬剤師の転職市場における求人数の実態を解説してきましたが、特に以下のような状況にある方にとって、この記事の情報は役立つはずです。
まず、「薬剤師の転職市場がまだ売り手市場なのか確認したい」という方。有効求人倍率のデータからも明らかなように、2026年時点ではまだ売り手市場が続いていますが、将来的な変化も見据えた判断が求められます。次に、「どの転職サイトを使えばいいかわからない」という方。各サイトの求人数だけでなく、求人の質やサポート体制を比較することの重要性をお伝えしました。そして、「地方と都市部で求人状況がどう違うのか知りたい」という方。薬剤師偏在指標のデータを活用すれば、有利に転職できるエリアを見つけることができます。
さらに、「今すぐ転職すべきか、もう少し待つべきか迷っている」という方にとっても、月別の求人倍率の変動パターンや将来の需給予測は判断材料になるでしょう。転職のタイミングは個人の状況によって異なりますが、データに基づいた意思決定をすることで、後悔のない転職を実現できる可能性が高まります。
将来予測から見る薬剤師の求人数の行方
現在は売り手市場の薬剤師ですが、将来的にはどうなるのでしょうか。厚生労働省の需給推計によると、おおむね2030年前後までは高齢化の進行や院外処方箋の発行増加により薬剤師の需要は増加する見込みですが、それ以降は供給が需要を上回り、2045年には2万4千人から最大12万6千人の薬剤師が過剰になるとの見通しが示されています。
この供給過剰が予測される背景にはいくつかの要因があります。第一に、日本全体の人口減少により投薬対象者数そのものが減少していくこと。厚生労働省の推計では、薬局における投薬対象者数は2020年の11.3億人から2045年には10.9億人へ減少するとされています。第二に、処方箋枚数が2035年の約9.5億枚をピークに減少に転じると見込まれていること。第三に、薬学部の新設ラッシュにより薬剤師の供給が増え続けていることです。
一方で、在宅医療の推進やかかりつけ薬剤師制度の普及、電子処方箋やオンライン服薬指導への対応など、薬剤師の業務領域が拡大することで需要が押し上げられる可能性もあります。厚生労働省の推計でも、薬局薬剤師の在宅業務量が2045年までに2倍になるとの仮定が置かれています。
つまり、将来的に「求人数が減る」ことはほぼ確実ですが、その減り方は薬剤師がどれだけ新しい役割を担えるかによって変わります。対物業務(調剤)から対人業務(服薬指導・健康相談・在宅対応)へのシフトに対応できる薬剤師は引き続き高い需要が見込まれる一方、従来型のスキルにとどまる薬剤師は求人の選択肢が狭まる可能性があります。転職を考えるなら、将来の市場変化も視野に入れたキャリア設計が不可欠です。
よくある質問(FAQ)
Q. 薬剤師の有効求人倍率はどのくらいですか?
A. 厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、2025年3月時点の医師・歯科医師・獣医師・薬剤師の有効求人倍率はパート含みで2.30倍、パート除きで3.24倍です。全職種平均の約1.2倍と比較して非常に高い水準にあり、薬剤師は引き続き売り手市場と言えます。ただし、この数値は薬剤師単独ではなく、医師等を含む職業分類全体の数値である点に留意が必要です。
Q. 転職サイトの求人数はどの程度信頼できますか?
A. 転職サイトの公開求人数は、各社の掲載方針や集計方法によって異なります。同一施設の複数ポジションがそれぞれ1件としてカウントされる場合や、複数サイトに重複掲載されるケースもあるため、数字の大きさだけで判断するのは適切ではありません。求人数に加えて、非公開求人の質やコンサルタントのサポート力、職場の内部情報の提供体制なども重視して転職サイトを選びましょう。
Q. 薬剤師の転職に最適な時期はいつですか?
A. 有効求人倍率のデータ分析から、例年12月から3月にかけてが求人数・求人倍率ともにピークとなります。転職活動を始めるなら11月頃から準備を開始し、12月以降に選考を進めるのが理想的です。一方、5月から6月は求人倍率が最も低くなる傾向があります。ただし、病院の欠員補充や新規開局の求人は季節を問わず発生するため、常に情報をチェックしておくことも大切です。
Q. 地方と都市部で求人状況はどう違いますか?
A. 薬剤師偏在指標を見ると、東京・大阪・神奈川などの大都市圏では薬剤師が充足している一方、福井県・青森県・富山県などの地方では深刻な不足状態にあります。そのため、地方の方が求人数に対する競争率が低く、年収700万円以上の高待遇求人も出やすい傾向にあります。地方への転職は待遇面で有利になりやすい反面、生活環境の変化も伴うため、総合的に判断することが大切です。
Q. 薬剤師は将来、求人が減りますか?
A. 厚生労働省の需給推計によれば、2030年頃までは需給がほぼ均衡するものの、それ以降は供給が需要を上回り、2045年には2万4千人〜12万6千人の薬剤師が過剰になると予測されています。ただし、在宅医療や健康サポート機能の拡充など業務領域の拡大が進めば、この予測は変動する可能性もあります。将来を見据えて、対人業務やICTスキルなど市場価値を高めるための自己研鑽を続けることが重要です。
Q. 薬剤師の平均年収はどのくらいですか?
A. 令和6年の賃金構造基本統計調査によると、薬剤師の平均年収は約599.3万円です。男性平均は約651万円、女性平均は約556万円で、年齢別では50〜54歳がピークとなります。職場別では、製薬企業やドラッグストアが比較的高く、病院薬剤師は相対的にやや低い傾向にあります。管理薬剤師になると平均年収は約730万円まで上昇するため、キャリアアップによる年収向上も十分に可能です。
まとめ:薬剤師の転職は「数字の読み解き方」が成功のカギ
薬剤師の転職市場は、2026年現在も有効求人倍率が2〜3倍台と高水準を維持しており、売り手市場が続いています。主要転職サイトの公開求人数も5万件から7万件超と豊富で、転職先の選択肢には事欠きません。しかし、その数字の裏にある「重複掲載」「パート込みの計算」「地域による大きな偏り」を理解したうえで情報を活用することが、転職を成功に導く最大のポイントです。
季節別では11月から3月が転職活動のベストシーズンであり、地域別では薬剤師不足の地方ほど好条件の求人に出会える確率が高まります。また、将来的な薬剤師過剰が予測されている今だからこそ、対人業務スキルやICTリテラシーを磨き、「選ばれる薬剤師」になるための準備を始めることが大切です。
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