
1:薬剤師の約6割は「調剤薬局」に勤務
薬局、病院、ドラッグストア......薬剤師が働く場所は様々ですが、現状はその6割が調剤薬局勤務だと言われています。
[薬剤師の勤務先]
1位 調剤薬局 59%
2位 病院 21%
3位 ドラッグストア 10%
4位 企業 6%
2025年問題や調剤報酬改定、かかりつけ薬剤師制度の開始や大手によるM&Aなど、様々な要因により業界全体が変化しつつあります。
薬剤師はこれからの時代、どんな働き方をすればいいのでしょうか。薬剤師として、どんな将来を見据えていけばいいのでしょうか。それを考えていくため、ここで改めて業界を比較し、理解を深めておきましょう。
[調剤かドラッグストアか迷ったら ―転職HAKASEオススメ転職サイト3選]
2:[業種別年収]2016年→2017年薬剤師の年収金額変動
薬剤師として勤務している、または今後薬剤師を目指すという方が気になる「年収」について、まずは業種別に比較していきましょう。
[業種別給与比較]
2017年 | 2016年 | 差分 | |
---|---|---|---|
調剤併設Dgs | 557万円 | 555万円 | +2万円 |
調剤薬局 | 543万円 | 550万円 | -7万円 |
病院 | 495万円 | 499万円 | -4万円 |
こちらは薬剤師の勤務先としては一般的な、ドラッグストア、調剤薬局、病院という業種別の給与を比較したもの。
縦軸(業種別)で比較すると、2016年2017年いずれも病院が最も年収額が低く、続いて調剤薬局、最も高いのがドラッグストアという結果になっています。
一方横軸(2016年→2017年の金額推移)で比較すると、調剤薬局の年収が+2万円とUPしているのに対し、病院は−4万円、調剤薬局は実に−7万円。
ドラッグストアとの比較で言えば、この1年間だけで9万円も差が開いたことになります。
3:[年齢別年収]20代~60代薬剤師の年収金額推移
次に、業界別に薬剤師の年齢による年収の推移を見てみましょう。
[業界×年齢の平均年収]
※転職HAKASE独自アンケートによる転職者の平均年収データ
【2017年最新版】都道府県別『薬剤師の平均年収』より
30〜35歳までの年収は病院<調剤薬局<ドラッグストアという順でドラッグストアで働く薬剤師の年収が高いという結果に。
50代後半ではドラッグストア<調剤薬局<病院という大逆転が起こりますが、最終的には調剤薬局<病院<ドラッグストアという結果になりました。
業種別に見てみましょう。
ドラッグストア薬剤師の年収は年代による波があり不安定に見えます。
60代以上はその他の業種とくらべて最も高くなっていますが、企業規模や役職の有無で大きな格差が生まれるということも容易に想像できる結果となりました。
調剤薬局の薬剤師の年収は、40代前半を最高値としてなだらかに上昇し、それ以降下降していることがわかります。
比較的女性の勤務が多い調剤薬局ならではの波形で、50代を超えると年収アップよりも、のんびりと働くことを重視して職場選びをする調剤薬局勤務薬剤師さんの現状がうかがい知れる結果となりました。
病院薬剤師の年収は、最もわかりやすく右肩上がりです。
30代まではその他の業種に差をつけられていますが40代に入ってぐっと年収が上がります。その後緩やかに上昇を続け、50代後半では最も高くなります。そもそも病院薬剤師として50代後半まで勤務している薬剤師自体のパイは少ないということもありますし、50代では何らかの役職についていることが多いでしょう。
その為、年齢とともに年収が上がり続けるという結果も納得ですね。
この結果から年齢による年収アップが確実に見込めそうなのは病院薬剤師だということが分かります。
病院にフォーカスしてキャリアを積むことで、除々にではありますが着実に年収を伸ばせるでしょう。
調剤薬局も病院同様、同じ職場で働き続けることでの大幅な年収アップは難しいものの、転職や雇用形態の変更等をきっかけに年収を上げたり、逆にプライベートを優先させて仕事をセーブするなどの融通のきかせやすい業種でもあります。
ドラッグストアは体力勝負なところもあるので、体力に自信がある間はポジションや年齢に関係なく年収は高く出やすいです。しかし、逆に言えば体力が続かなくなった時、役職についていないと年収の維持が難しくなる業種でもあるということがわかりました。
4:[業界の市場規模比較]調剤薬局薬剤師VSドラッグストア薬剤師
次に、調剤薬局とドラッグストアの市場規模を比較してみましょう。
[業種別 市場規模/店舗数/店舗当たり売上]
市場規模 | 店舗数 | 1店舗当たりの売上金額 | |
---|---|---|---|
調剤薬局 | 調剤医療費 7兆8,192億円 | 約5万7800店舗 | 約1億2,300万円
(H26データより算出) |
ドラッグストア | 全国総売上高 6兆4,916億円 | 約1万8800店舗 | 約3憶4,000億円 |
「調剤医療費(電算処理分)の動向~平成27年度版~」(厚生労働省)を基に転職HAKASEにて集計
「厚生労働省医薬・生活衛生局調べ、1996年までは各年度12月31日現在、1997年以降は、各年度末現在」を基に転職HAKASEにて集計
・2016年度版日本のドラッグストア実態調査(日本チェーンドラッグストア協会)を基に転職HAKASEにて集計
市場規模を調剤医療費と全国のドラッグストアの売上金額で比較すると、
調剤薬局が約7兆8,000億円
ドラッグストアが約6兆5,000億円
と、調剤薬局の方が市場の金額規模が大きいことが分かります。
店舗数についても、調剤薬局がドラッグストアの約3倍と、圧倒的に多いことがわかります。
しかしながら、1店舗あたりの売上で見ると
調剤薬局が約1億2,300万円
ドラッグストアが約3億4,000万円
と、ドラッグストアの方が約3倍もの規模になることが導き出されます。
ドラッグストアの店舗あたり売上金額の大きさに驚きますね。
次にそれぞれの指標の推移から市場の成長率を調剤薬局とドラッグストア業界を比較しながら追ってみましょう。
[調剤医療費×ドラッグストア売上高推移]
調剤医療費、ドラッグストア売上高、共に前年比100%以上の成長を続けていることがわかります。
特に2016年のドラッグストアの売上高の増加は大きくこれはドラッグストアの売上の約30%を締める医薬品の売上が好調だったことが要因のようです。
[店舗数推移と1店舗あたり売上高の推移]
調剤薬局もドラッグストアも店舗数は右肩上がりで増加を続けています。
売上金額の推移では調剤薬局では2014年に前年割れ、ドラッグストアでは2012年~2015年まで連続で前年割れが続く状況でしたが、し2016年に回復、2013年の水準まで戻っています。
ドラッグストア事情について
2016年度調剤報酬改定後もドラッグストア業界では引き続き、「大手企業によるM&A」が積極的に進められています。
店舗数が右肩上がりなのに対し、企業数は2004年以降減少を続けています。
大手の資本力を背景に大型店舗の出店が増えたことで、医薬品だけでなく食料品・健康食品・衣料品・日用品など、幅広い商品を取り扱うワンストップショッピング化が浸透してきました。またOTC医薬品の販売が一般化したことなどが、売上規模の拡大に寄与しているようです。
外国人観光客の多いエリアでは外国語のPOPを積極的に取り入れるなど、訪日外国人によるインバウンド需要も高まり、ドラッグストア産業自体が日本の産業としてなくてはならないものになりつつあるようですね。
5:薬学生の動向―就職先では「調剤薬局」と「病院」が拮抗
[新卒薬剤師の就職先]
[薬学生の就職先の人気ランキング]
1位 調剤薬局 34%
2位 病院 28%
3位 企業 10%
4位 ドラッグストア 5%
薬学生の就職状況はどのようになっているのでしょうか。
新卒薬剤師の内定先でもやはり調剤薬局が1位となっています。しかし実は病院を選ぶ新卒薬剤師も多いのです。その数は1位の調剤薬局に僅差で迫るほど。
こちらの記事を読んでくださっている薬剤師の皆さんも、就職活動で病院か調剤薬局へ進むか悩まれた記憶があるのではないでしょうか。
[新卒薬剤師が就職先を選んだ理由]
●調剤薬局 : 比較的高収入、安定しているイメージ
●病院 : 薬のプロとして医療の現場で力を発揮し、貢献したい
●企業(研究開発) : より安全な薬をより早く世の中に送り出す為、創薬に携わりたい
●ドラッグストア : とにかく高年収!業界の成長率が高そうで将来性を感じた
薬剤師としてのキャリアの入り口で病院就職を志す理由はやはり、医療、社会への貢献のようですね。
しかし実際には「夜勤がキツイ」「年収が低い」「命の現場で働き続けることに疲れた」等、数年で転職を検討する新卒病院薬剤師が多いのも現実。
調剤薬局やドラッグストアで働く同年代の薬剤師の年収と比較し、あまりの差に絶望して病院から調剤薬局への転職をする薬剤師は多いようですね。
[参考]新卒薬剤師の採用条件比較
では調剤薬局・ドラッグストア・病院どれほど待遇は異なるのでしょうか。
それぞれの初任給、業務内容、年間休日を比較してみましょう。
初任給 | 業務内容 | 年間休日 | |
---|---|---|---|
調剤薬局 | 270,000円 | 調剤薬局における薬剤師業務 | 122日 |
ドラッグストア | 330,000円 | 調剤薬局、OTC医薬品相談販売業務、ドラッグストア及びア調剤薬局の経営、高齢者住居・施設における取組み | 116日 |
病院 | 230,000円 | 院内薬局での調剤、入院患者様への薬剤管理・服薬指導、がん化学療法への取り組み等 | 105日 |
初任給はドラッグストア薬剤師が圧倒的に高いようです。
調剤薬局の薬剤師と比較すると6万円、病院の薬剤師と比較すると実に10万円の開きがあります。
年収の高さに引かれてドラッグストアを志望する薬学生が多いのも納得です。
年間休日が多いのは調剤薬局。年間休日は120日を超えているところが多いようでした。
病院は他の業種に比べてかなり少ない印象ですね。
また各種就職サイトで情報を見て比較してみると、福利厚生の充実度も調剤薬局やドラッグストアの方が、病院よりも充実している印象でした。
とはいえ、条件面では比較できないやりがいが病院勤務の薬剤師業務にはあります。また、大手の病院では積極的に業務改善や制度改善が行われており、決して病院の勤務状況が劣悪というわけではないので、それぞれの特徴をよく知った上で志向やキャリアパス、ライフステージにあった選択をしていきたいものですね。
[初めての転職もおまかせ! ―転職HAKASEお勧め紹介会社一覧]
6:業界最大手比較 調剤薬局・ドラッグストア
それでは最後に、調剤薬局とドラッグストアの大手3社の企業比較をしてみましょう。
[調剤薬局大手3社比較]
売上高 | 店舗数 | 従業員数 | |
---|---|---|---|
株式会社アインホールディングス | 2,218億円(2017年4月期) | 1066店舗 | 6469名 |
日本調剤株式会社 | 1,893億円(2017年3月期) | 557店舗 | 3781名 |
クラフト株式会社 | 1,680億円(2017年3月期) | 756店舗 | 3302名 |
1.株式会社アインホールディングス
売上高 221,801(百万円)
店舗数 1,066店舗
従業員数 6,469(名)
2016年度、積極的なM&Aや出店強化によりグループ調剤薬局総数は1066店舗へ。医薬事業の売上高は2218億1百万円となりました。引き続き「かかりつけ薬剤師・薬局」の機能強化のため、在宅対応を中心とした地域医療との連携、お薬手帳等を活用した薬剤に関する情報の一元的・継続的管理の強化、ジェネリック医薬品の使用の促進に努めています。
また都市型ドラッグストア「アインズ&トルペ」の出店を継続的に実施しドラッグストア店舗総数は52店舗に。収益性拡大のためオリジナルブランドの「LIPS and HIPS(リップアンドヒップス)」及び「cocodecica(ココデシカ)」を積極的に展開。ドラッグストア事業の2016年度売上は213億8,300万円(前年同期比2.4%増)となりました。
2.日本調剤株式会社
売上高 189,327(百万円)
店舗数 557店舗
従業員数 3,781(名)
C型肝炎治療薬の大幅な薬価引下げや診療報酬改定によるマイナスの影響が大きく、2016年度の売上高は189,327百万円(前年同期比0.8%減)と僅かながら減少しました。
営業利益も処方せん応需枚数が想定を下回ったことなどにより、9,560百万円(同10.7%減)と減益。
調剤報酬については、改定の影響により一時的に減少したものの、かかりつけ薬剤師としての服薬指導の推進、ジェネリック医薬品の使用促進、在宅医療 への積極的な取り組みなどにより、当連結会計年度末時点では、概ね前年同期の水準にまで回復しています。
また、医薬品製造販売事業においては診療報酬改定によるジェネリック医薬品使用の後押しもあり増収。生産能力拡大に向けて新たな工場の建設が順調に進められています。
(参考)日本調剤株式会社 有価証券報告書
3.クラフト株式会社
売上高 168,095(百万円)
店舗数 756店舗
従業員数 3,205(名)
クラフト株式会社の展開する調剤薬局「さくら薬局」は全国756店舗で、調剤薬局シェアで関東1位・近畿3位を誇ります(※調剤薬局シェア「 DRUG magazine(ドラッグマガジン)」 2016年9月号調べ)。ほか、こども薬局・認知症カフェ・店舗内ガーデニングなど、地域に密着した活動も積極的に行っています。
「かかりつけ薬局」への高いニーズへ応えるため、専門性とホスピタリティを備えた<"生涯求められる"薬剤師>の育成を重視し、次世代のコア人材育成に特化した「さくら PLANET」という独自の教育プランをスタート。2005年の627億円(2007年3月期)から10年間で1000億円以上の売上UPに成功しています(2017年3月期の売上1680億円)。
(参考)マイナビ2019 クラフト(株)
[ドラッグストア大手3社比較]
売上高 | 店舗数 | 従業員数 | |
---|---|---|---|
ウエルシアホールディングス株式会社 | 6,232億円 | 1532店舗 | 6776名 |
株式会社ツルハホールティングス | 5,771億円 | 1755店舗 | 6371名 |
株式会社マツモトキヨシホールディングス | 5,161億円 | 1555店舗 | 6243名 |
1.ウエルシアホールディングス株式会社
売上高 623,163(百万円)
店舗数 1,532店舗
従業員数 6,776(名)
積極的なM&A、既存店の改装、お客様への安心の提供と利便性向上を目的とした24時間営業店舗の拡大、調剤併設率の向上による調剤売上の伸長等もあり、既存店の売上高は好調に推移しました。
「ドラッグ&調剤」、「カウンセリング営業」、「介護」を中心としたウエルシアモデルを推進し、利便性や快適性を追求した調剤併設店舗を基本とする事業展開を推し進めるとともに、薬剤師・登録販売者の人材育成にも注力をしています。
2.株式会社ツルハホールディングス
売上高 577,088(百万円)
店舗数 1,755店舗
従業員数 6,371(名)
グループ全体での総店舗数は1755店舗になりました。カウンセリングを重視した接客サービスを徹底しており、高付加価値商品のカウンセリング販売、顧客の高齢化を見越した既存店の改装、オリジナルブランド「エムズワン」「メディズワン」のデザイン統一などの営業施策を展開。前年同期比26.4%以上の増益を成功させました。
3.株式会社マツモトキヨシホールディングス
売上高 516,147(百万円)※小売事業
店舗数 1,555店舗
従業員数 6,243(名)
次世代ヘルスケア型店舗「matsukiyo LAB」の拡大、かかりつけ薬局をサポートする「調剤サポートプログラム」のリリース、主要店舗におけるApple Pay(アップルペイ)での支払いサービスの開始など新たな試みを推進する一方、新規会員の獲得にも注力し、延べ4800万人超まで拡大しており、ビッグデータを活用し多様化する顧客ニーズへ対応を可能にしています。
訪日外国人観光客の購買動向の変化もきめ細かく対応した各種のマーケティング戦略により、引き続きインバウンド需要は順調に獲得を続けています。
調剤事業に関しても、収益性の良い既存店への併設を推進したり、地域医療連携を深めることで処方箋応需枚数が増加したことなどから引き続き順調に拡大しています。調剤報酬改定のマイナス影響においても積極的な「かかりつけ薬局化」を推進することで最小限の影響にとどめました。
(参考)株式会社マツモトキヨシホールディングス 有価証券報告書
7:調剤薬局VSドラッグストア業界動向まとめ
今回は、調剤薬局とドラッグストア(および病院)の業界比較をしてみました。
【調剤薬局とドラッグストア業界動向のポイント】
- 調剤薬局で働く薬剤師は全体の6割
- 調剤薬局・ドラッグストア共に市場規模は拡大を続けている
- ドラッグストアのM&Aは引き続き進行
- ドラッグストアは特に医薬品の売上が伸びてきており、店舗あたりの売上は3億4000万円を超える
- 薬学生の就職先は調剤薬局3割、病院3割
- 調剤薬局・ドラッグストア共に大手3社は右肩上がりの成長を遂げている
調剤薬局、ドラッグストア業界共に成長を続けていることがわかる結果となりました。
それぞれの業界の成長ベクトルを正しく把握し、より自分にあった選択をすることがあなたのキャリア形成や、満足度の高い働き方に直結します。
キャリアの相談や、業界の選択に迷った時はプロのコンサルタントの意見を聞いてみることをお勧めます。
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